他人家族について
大分県耶馬溪の山の中で、血縁のない大人と
子どもたちが、家族として暮らしています。

一緒にご飯を食べ、子どもを育て、
働き、家や田畑を整えながら暮らす13人家族です。
けれど、私たちが目指しているのは、
「血縁を超えた新しい家族のかたち」ではありません。
みんなで暮らすことも、
たくさんの大人で子どもを育てることも、
私たちにとっては目的ではなく、ひとつの方法です。
私たちがずっと考えてきたのは、
“これから生まれてくる命に、どんな未来を残していけるだろう。”
ということでした。
01
命を中心に、暮らしをつくる
私たちが大切にしていることは、
とてもシンプルです。
お金よりも、都合よりも、心の声よりも、
目の前にある命を大切にすること。
子どもとの時間より、仕事を優先する。
やってみたい気持ちより、大人の都合を優先する。
本当はどうしたいのかより、
「普通はこうするもの」を優先する。
暮らしていると、
いつの間にか命よりも優先してしまうものが、
たくさんあります。
だから私たちは、その順番を変えてみることにしました。
仕事に暮らしを合わせるのではなく、
命を中心に置いたとき、どんな仕事をし、どんな人と関わり、
どんな環境で暮らしたいのかを考える。
今ある暮らしの形に命を合わせるのではなく、
命に合わせて、暮らしの方をつくり直していく。
動物も、植物も、人間も。
それぞれが持っているものを十分に使い、
その力がまた、ほかの命や環境へと巡っていく。
私たちは、そんなふうに命が巡っていける未来を
残したいと思っています。
他人家族の暮らしは、
そこから始まっています。
02
子どもを変えるのではなく、
育つ環境を整える
子どもたちにも、
「こう育ってほしい」という形を
先に用意しているわけではありません。
大切にしたいのは、
常識や「普通」を通して見るのではなく、
目の前にいるその子自身を見ること。
何が好きなのか。
何に惹かれるのか。
何をやってみたいのか。
そして、やりたいことがあったら、
できるだけその経験を奪わない。
うまくいかなくても、
失敗しても、
まずは見守る。
そして必要になったときには、
手を差し出す。

そんな経験を幼い頃から積み重ねることが、
“望む未来を手に入れていく力”になると考えています。
けれど、そのためには
子どものことだけを見ていてもできません。
大人自身が、自分の心を整えていく必要があります。
大人の恐れや正しさ、比較や常識を通して見れば、
目の前にいる子どもを見るのではなく、
「子どもはこうあるべき」と育てることになってしまうからです。
03
一人では見えないものを、
一緒に見る
自分の不安や常識に動かされていることに、
自分では気づけないことがあります。
「普通だから」
「この子のためだから」
「これが正しいから」
そう信じているものほど、
自分一人では見つけにくい。

だから私たちは、
互いの内側に深く関わります。
何か違和感を感じたら声をかける。
自分の中にあるものも、できるだけ言葉にする。
誰かに正解を教えてもらうためではなく、
一人では見えなくなっているものを、
一緒に見つけるために。
血縁のある家族にさえ見せてこなかったところまで、
互いに関わりながら暮らしていく。
私たちにとって「家族」は、
血のつながりだけで決まるものではありません。
04
だから、
暮らしの形そのものを変えた
子どもの「やってみたい」を待つこと。
一人ひとりをまっすぐ見ること。
大人自身が心を整えること。
食べるものをつくり、家を整え、働くこと。
そして、自分たちが暮らす自然環境を整えていくこと。
それらを本当に大切にして暮らそうとすると、
大人一人や二人で子どもを育てながら
すべてを担うことには無理がありました。

だから私たちは、
今ある家族の形の中で頑張り続けるのではなく、
暮らしの形そのものを変えました。
血縁を越えて、
同じ未来を目指す人たちと家族になる。
そうして始まったのが、他人家族です。
05
命が力を発揮できる環境を、
未来へ
子どもが育つ環境を整えることも、
大人の心身を整えることも、
田畑を耕すことも、
私たちにとっては別々のことではありません。
田畑では、作物だけを育てるのではなく、
微生物をはじめとする命が繁栄できる土をつくる。
人に対しても同じです。
誰かを思い通りに育てたり、変えたりするのではなく、
その命が、本来持っている力を発揮できる環境を整える。
私たちがしたいのは、
そういうことなのだと思います。

地球は、私たちにとって家と同じです。
家を整えるように、
土を、水を、人との関係を、暮らしを整える。
命が巡る場所は、
人間にとっても心地よく、
人もまた、その力を発揮しやすくなる。
そして、あらゆる命が巡る環境を整えていくことも、
人間がこの地球で担っている役割のひとつだと考えています。
私たちが大切にしているのは、
「他人家族」という暮らしの形そのものではありません。
血縁のない人と家族になることも、
たくさんの人で一緒に暮らすことも、
ひとつの方法です。
それぞれの場所で、それぞれの人が、
目の前にある命を大切にすること。
仕事や人との関わり、暮らす環境をつくっていく。
その先に、私たちが残したい未来があると思うからです。
これから生まれてくる人が、
その命を十分に使って生きられる環境を残していくこと。
そのために、
今の私たちにできることを、
今日の暮らしの中でやっていく。
他人家族は、私たちが望む未来へ向かうために
選んだ、ひとつの暮らしのかたちです。
他人家族が生まれるまで
どうして血縁のない人たちと家族として暮らすことになったのか。
そこに至るまでの物語は、note「なぜ他人家族なのか」で綴っています。
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